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英国の医療事情について

英国の医療最新情報です。

英国も日本と同じ国民皆保険制度があり、GDPに占める医療費の割合も8%弱と同程度です。英国のほとんどの病院は、国民保健サービス(NHS)に所属しており、プライベート医療は全体の1割以下です。NHSの病院・クリニックを受診時の負担は原則無料です。
 国民は、一般家庭医(GP)を自分で決めて登録します。病気になると、まずGPの診察、治療を受けます。入院が必要な場合などは、GPの紹介を得て初めて、専門病院での治療を受けることができます。
 サッチャー首相(保守党)は、1990年代に医療費を抑制しました。病床数をを減らして、市場原理を導入しました。その結果は、医師、看護師の海外流失、人手不足、病床不足が起こり、患者は長い時間、待つのが当たり前になりました。入院まで、6ヶ月~12ヶ月待つのが普通です。100万人の入院待ち待機者ができてしまい、医療従事者の士気の低下、医療の荒廃を招いたのです。
   ブレア首相(労働党)は、医療費の拡大政策に方向転換しました。医師、看護師を増やして、より医療にお金をかけることにしたのでです。医療費を1.5倍にして、フランス、ドイツ並みのGDP比10%にするよう計画しました。医療の質を向上させる努力をしています。NHSの病院は、85%が租税、13%が国民保険料、自己負担は2%です。
 超高齢化社会を迎える日本に医療費は、絶対的に増加していきます。医療費を抑制する論議から、いかにして医療の質を高めるか議論が必要です

Cambridge(人口10万9000人)

2005 年6 月に英国のいくつかの医療施設を見学してきました。以下、都市ごとに少しまとめてみました。
 ケンブリッジは、21 のカレッジから構成される大学の街です。大学が初めてできたのは13 世紀のことです。Kings College は、その一つであり、イートン校の卒業生のために1441 年に建てられました。Kings Chapel と言われる大聖堂あり(写真左)、その荘厳な外観と内部のステンドグラスなどは歴史を感じます。街の中央をケム川が流れ、観光客はパントという小舟に乗って、川沿いの壮麗な建築物や美しい風景を堪能できます。
 宿泊したホテルHambleton Hall のオーナーTim Hart の自宅に招かれました。マナーハウスを改装した古い建物が住まいで、よく手入れされた英国式庭園があります。彼のような比較的裕福な人は、民間保険に加入していて、医療の質が高く、すぐに診察してもらえるプライベート医療を受けています。民間医療保険加入者は、国民の約1 割で、医療費ベースでは7.4% を占めています。
 また、驚いたのは、NHS を無料で利用する場合には、待たないといけないのですが、自己負担をすると同じ治療が早く受けられるとのことでした。「金がものを言う世界」が医療に存在することには、違和感を覚えました。

Leeds(人口71万5000人)

リーズは19 世紀に毛織物産業で発展した街です。リーズ大学は語学、芸術の分野で有名であり、町中にも外国人が沢山いました。ロンドンのテロリストの数名がこの町に潜伏していたのには驚きました。
 キャンパス内でPeter と待ち合わせ。彼は、日本語を専攻していて、昨年(2004年)留学で約一年間、日本に滞在していました。縁あって、我家に数日宿泊していき、一緒に温泉まで入った仲です。彼にリーズを案内してもらいました。
 The Leeds Teaching Hospital は、英国のNHS トラストでも最も規模の大きい施設の一つです。3,000床、15,000 名のスタッフが働いています。このトラストは、歯科を含めて8 つの病院から構成されています。
 Peter によれば、「原則は、GP からの紹介が必要であるが、救急の場合には直接受診できる。」( 診察までには数時間待つことになるのであろうが・・)
 「風邪の時などは、どうするのか?」と尋ねたところ、「風邪では受診しないよ。」とあっさりと言われてしまいました。英国では、風邪は病院に行く病気とは思われていないようです。

York(人口18万1100人)

 リーズから車で30 分走ると、古都ヨークに着きます。71 年にローマ人によって作られた都市です。イギリス最大のゴシック建築のヨーク大聖堂が有名です。13 世紀の初めから約250 年の歳月をかけて、1472 年に完成しています。内部のステンドグラスは、感動的で大きさも世界最大級のものです。
 York district Hospital は、York Hospitals NHS Trust により運営管理されています。NHS の格付けでは、最高の3 つ星ランクになっています。3つ星を獲得したトラストは、中央からの自由度がより多きい財団トラストへ移行する道が開かれています。718 床で、5,400 名のスタッフが働いており、ヨーク市とその周辺30 万人の治療に寄与しています。
 ヨークは、中世の雰囲気を伝える北部イングランド中心的な都市で、魅力的な街でした。

Wales(総人口約300万人)

 ウェールズには、別組織のNHS Wales があり、81,000 名のスタッフが働いています。NHSは、ウェールズの雇用の7% を占める重要な産業になっています。ウェールズに入ると道路標識も、ウェールズ語(Cymraeg) と英語の2 カ国語併記となります。ウェールズ大学の本部は、首都Cardiff にあるのですが、北ウェールズのBangor校を訪問しました。大学内の標榜等もすべて併記になっています。バンゴールには、イギリス最古の大聖堂があり、学園都市としてにぎわっています。
 ウェールズ人は誇り高く、今もケルト文化を継承しています。全体的に山がちの地形で、国立公園が南北に2 つあり、雄大な景色が楽しめます。古城も多くあり、Bodnant という有名な庭園もあります。(写真)
 St. David’ s Hospice ホスピスの看板には、「St. David’ s will be a heaven for all」と書いてありました。北ウェールズの美しい海岸の保養地であるLlandudno(スランドゥドゥノ) にあります。ベッド数はわずかに6 床ですが、デイケアのサービスも行っていました。
 近代ホスピスの発祥の地は、ロンドン南東部にあるセント・クリストファー・ホスピスで1967年に開設されています。スタッフにボランティアが多く、特にトレーニングを受けた専門的なボランティアもいて、運営を手伝っています。また、財政的にも寄付やチャリティによる収益が重要な役割を果たしています。これらは、日本の状況とは大きく異なっています。

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